津地方裁判所 昭和63年(わ)178号 判決 1988年9月30日
本籍
三重県鈴鹿市國分町五六五番地
住居
同市国分町五六六番地
会社役員
永戸俊也
昭和一七年一二月二九日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官多和田洋二出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金二五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、三重県鈴鹿市国分町五六六番地に居住し、同市内二か所において「スーパー名門自由ケ丘店」及び「スーパー名門神戸店」の名称で総合食品雑貨販売業を、同県四日市市内二か所において「坂部市場」等の名称で青果小売業をそれぞれ営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、所得金額に関する収支計算をせず適宜の金額を計上するいわゆる「つまみ申告」を行う方法により所得の一部を秘匿した上、
第一 昭和五九年分の実際の所得金額が七〇七六万五六六一円であり、これに対する所得税額が三五六八万四三〇〇円であるにもかかわらず、昭和六〇年三月七日同県鈴鹿市神戸九丁目二四番四五号所在の所轄鈴鹿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三〇〇万円であり、これに対する所得税額が三〇〇万九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、昭和五九年分の正規の所得税額との差額三二六八万三四〇〇円を免れ、
第二 昭和六〇年分の実際の所得金額が八六七四万六三九〇円であり、これに対する所得税額が四六七一万八三〇〇円であるにもかかわらず、昭和六一年二月二四日前記鈴鹿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一七〇〇万円であり、これに対する所得税額が四九六万三五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、昭和六〇年分の正規の所得税額との差額四一七五万四八〇〇円を免れ、
第三 昭和六一年分の実際の所得金額が七二一〇万四〇〇九円であり、これに対する所得税額が三六七三万三八〇〇円であるにもかかわらず、昭和六二年三月九日前記鈴鹿税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一九〇五万円であり、これに対する所得税額が六二六万二五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、昭和六一年分の正規の所得税との差額三〇四七万一三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する各供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 被告人作成の上申書
一 永戸正俊、伊藤勉、永戸真由美、伊藤ます子及び黒田一子の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 検察官事務官作成の各捜査報告書
一 大蔵事務官作成の告発書、脱税額計算書説明資料、各査察官調査書(二〇通、検甲6ないし13、18ないし20、22ないし30)及び各写真撮影報告書
一 鈴鹿市長作成の戸籍謄本及び戸籍の附票の写し
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲2)及び各証明書(同37、40)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲3)及び各証明書(同38、41)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検甲4)及び各証明書(同39、42)
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、判示第一ないし第三の各罪についていずれも各所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第二の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金二五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、右懲役刑については情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 櫻林三郎)